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細川家の庶子に生まれまして。

細川家の庶子に生まれまして。

うなぎたべたい
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教科書はこの男を「最も無力な将軍」と書いた。——だが彼は、一度も詰まされなかった。 足利義昭。室町幕府最後の将軍にして「失敗した将軍」——京を追われ、流浪し、ついに天下を取れなかった男。だが将棋で言えば、彼は詰まされていない。投了もしていない。 これは、その義昭(覚慶)の傍らで、ひたすら盤を読み続けた男の話だ。名は覚円。あちら側の記憶を持つ、追い詰められた王の逃げ道を見つけることだけに異様に長けた、勝ちきれない「逃げの天才」。 覚円は逃がす。ところが覚慶は、逃がされた先から戦い始める。守られるはずの玉が、退くことを知らない怪物だった。 逃がす天才と、退かない怪物。二人が乱世を走り出す。 昼寝から起きて鹿に負ける、しょうもない優男。その裏に、誰も見ていない痛みと、折れない何かを抱えた人。覚円だけがそれを見てしまう。 詰まないことが勝ちなのか。この人にとっての本当の「勝ち」とは何か。——「失敗した将軍」は、実は負けなかった。その意味を確かめる旅が、奈良の寺の片隅から始まる。

4.2万字
2026年7月6日 22:22更新

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